まじゅーん診療ブログ

2013/11/12

今回は中耳炎の原因となる菌についての話です。

 

子供の急性中耳炎の原因としては①肺炎球菌、②インフルエンザ桿菌(あのインフルエンザウィルスとは別もの)この2つで過半数以上を占め、これにモレキセラ・カタラーリスを加えた3つを三大起炎菌と呼んでいます。当院でも全国でもその傾向は同様です(2013小児急性中耳炎ガイドラインより)その中でも肺炎球菌は発熱、耳痛などの症状が強く、まれに重症化して入院が必要となることもあります。

 

原因菌の結果が出て保護者の方に説明したときに、予防接種を受けたのにどうして肺炎球菌の中耳炎になるのかとよく質問されます。実は肺炎球菌には90種類以上のタイプがあります。肺炎球菌のワクチンはすべてのタイプに対応しているわけではなく、その中の重症な髄膜炎や肺炎を惹き起こすことが分かっているいわば凶悪な種類だけに対応しています。(これまでは7タイプに対応するワクチンでしたが、2013年11月からは新たに13タイプに対応できる新しいワクチンになっています)そのためこのワクチンがカバーできていないタイプの肺炎球菌が原因で中耳炎になっているのですと説明しています。

 

2才未満の子供は免疫系が未熟で肺炎球菌に対する免疫反応が起こりにくいため、髄膜炎や重症肺炎などの命に関わる感染症の予防を目的としてワクチンが作られました。中耳炎は本来の目的とは少しずれるのですがここ数年ワクチン接種が普及するにつれて入院が必要になるような重症の中耳炎も減ってきている印象があります。肺炎球菌ワクチンは公的補助の対象ですので中耳炎の重症化予防のためにも耳鼻科からも接種をお勧めします。

 

最近、この肺炎球菌の中で抗生剤が効きにくい薬剤耐性菌が増えてきています。2012年の全国からの報告では中耳炎の原因となった肺炎球菌のうち、約1/4が通常のペニシリンが効かない、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)でした。その原因として抗生剤の乱用が指摘されています。

 

その対策として中耳炎や副鼻腔炎に対するガイドラインが作成され、治療の一部としての抗生剤の標準的使用基準も設けています。耳鼻科は抗生剤の使用が多いとしばしば指摘されることもありますが、私は実際によく観察し、正確な診断を行い、また必要であれば細菌培養を行うなどして抗生剤を使用すれば病気もすみやかに治り、薬剤耐性化も防げると考えています。

 

また、病気を治すのが第一の目的ですので親御さんの協力も必要です。「1日3回で処方されたが忙しいので2回にした」「抗生剤を2週間分ほしい」などといった時として安易な要望や自己判断は逆に耐性菌を増やし、病気が長引く要因となることもあります。にがみがある薬などは工夫すれば飲めるようになることも多いので気になることはお薬をもらう際に薬剤師などからもアドバイスを受けましょう。

(mannmaのインタビューを一部改編しました)

 

長くなりましたが今回はこれまでとします。